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【サッカー選手×教員】御厨の3000字インタビュー(下)

阿部先生の1日

1日のタイムスケジュールは図の通り。5時半起床し、学校に着くのが6時半前後。朝練は毎日出るわけではなく、生徒だけで行う日もあるそうだ。学校は8時からの職員打ち合わせから始まり、授業は約(16時間/1週)(3時間/1日)担当する。授業がない時間で担当クラスの業務を行う。時間がある時は、読書やサッカー観戦をしている。クラブ活動は週1休みで、部員は100人を超え4つのカテゴリーに分かれている。帰宅は毎日21時くらいで土日もクラブ活動をみている。

生徒の「阿部さんのおかげでサッカーが好きになりました」。というこの言葉が指導者として冥利に尽き、一番うれしいという。「クラスもサッカーの指導も、今が楽しいようにしてあげたい」。彼のスタンスはサッカー選手の時も、教師の時も、指導者の時も変わっていない。私は甲府時代、ミスをして阿部さんから怒られた記憶がない。彼に聞けば、「ミスをしたい奴はいない。プロセスを無視して結果だけで怒ることはしたくなかったし、今もそうだ。」という。かと思えば、ふとした瞬間にボソボソっと指摘をする。当時、それが妙に私の心にささった。

彼が、生徒に対して一番褒める時は、約束事を破って成果を出すことができた時(守破離)だそうだ。「守破離」とは、武道などで修業における段階を示したものだ。型を知ったうえで、型を破る。その過程でミスは起きる。彼は「ミスから学べるようになると、多くのことを学ぶことができる。そして、与えるのではなく、一緒に創り出していきたい」と言った。このことは、サッカー選手は既に自然とやっている事だと私は思う。一般的にサッカーは脚で行う競技のため、ミスが多いスポーツだといわれている。選手は、日々の大半の時間をミスに対して向き合う事に費やす。続いて、サッカーにおける1人の力の範囲を知っている。つまり、目標を達成するための組織を創る必要があるのだ。これが、彼の言う「サッカー選手は教員に向いている」という理由の一つなのではないだろうか。そういう経験を彼は、選手to選手に行っていたものを、教師(サッカー指導者)to生徒に上手く転換させているのだと思う。

現役選手にメッセージ

自身の引退について、「次の仕事については長い局面では考えていた。サッカー選手が始まったと同時に教員も始まっていた。決断をしたというよりは受け入れただけ。」と当時を振り返った。
「現役選手は時間の余裕がある。ぜひ、たくさん読書をしてほしい。そして、多くの人と話をして社会とつながってほしい。ピッチ上では、サッカーを通じて自分にはどういう能力があるのかを認識してほしい。」と伝えた。実際に私は、阿部さんと話すと事例やたとえ話の豊富さに驚いた。ビジネス書や哲学書の他にも、TED talkも見ているそうだ。ただ彼は、26歳になるまで読書を一度もしたことがなかった。だからこそ早い時期からいろんな考えに触れた方が良い。読書など、他からの学びは競技にも活きるとメッセージを送った。

今後の展望

これからどうなりたいのかという問いに対し、阿部さんは「その人が生まれながらにして心地良い景色がある。その人が持っている道、行きたい道に寄り添い支えたい。」と答えた。彼は今、それを表現するのがサッカーの指導であったり、クラスなのだろう。一見すると、教員阿部謙作になっていたが、彼の奥底にある礎や考えの源は何十年と向き合ってきたサッカーが根底にあることが垣間見え、私は安堵感と同時にうれしい気持ちになった。

今回私は、阿部さんに会いに行ったことで、教員のリアルをほんの一部だが理解することができた。また、サッカーで培った能力をどのように普段落とし込んでいるのか参考になった。今後も、選手時代と同様に社会で輝き続ける元アスリートを紹介していく。

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